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不意に地面が揺れ、煬鳳の体の熱が急激に上昇した。あまりに突然のことで体を支えることもできずに煬鳳は崩れ落ちる。
「煬鳳!」
すぐさま凰黎が煬鳳を受け止めてくれたので事なきを得たが、上昇する体温と下げようとする凰黎の冷気とが拮抗して視界がぐるぐると回る。急激な体温の変化に体はついて行くことができず、嘔吐感が込み上げてきた。
「だ、大丈夫だ。すぐに落ち着くから……っ! それより……」
それよりも言わなければならないことがある。
いま何よりも大事なことなんだ。
煬鳳は歯を食いしばり、凰黎の襟を必死の思いで掴む。
「あいつは多分、黒炎山の火口に行く気だ。体が凄く熱い。きっと、龍の目覚めが近いんだ……!」
「なっ……」
凰黎が絶句し、煬鳳の様子を心配そうに見ていた面々もまた言葉を失った。
黒炎山の翳炎と繋がっている煬鳳だから分かる。
龍は封じられた黒冥翳魔の翳炎を養分として、睡龍の大地にすまう妖邪や人々の生気を糧にして、いま目覚めのときを待っている。
あとどれほどの養分があれば火龍が復活するのかまでは分からない。
しかし、確実のそのときは近づいている。
己の体が、上昇する体温が、そう告げているのだ。
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