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黒炎山へと続く山道を長い隊列が進んでゆく。
煬鳳たちを含めた、蓬静嶺、清林峰、彩鉱門の精鋭を集めた合同部隊だ。とはいえ、清林峰は戦うためではなくあくまで後方支援のために行動を共にしている。
意外だったのは、蓬静嶺の嶺主である静泰還がこの隊列を率いていることだ。彼は嶺主の座を継いでからこれまでずっと、積極的に戦いなどに加わることはなかった。
――多分、嶺主は瞋九龍に清林峰のことを問いただす気なのだろう。
嶺主の妻子を奪ったあの事件。その真偽を問いただしたいのは当然だ。
しかし同時に凰黎のこともまた、煬鳳は心配になる。察しの良い凰黎なら、静泰還の思いにも当然気づいているはず。
――きっと、嶺主様のことを心配してるだろうな……。
とはいえ、いかに家族同然に暮らしていたとて、実の妻子の問題に凰黎が口を出すことは決してしないだろう。
「体はもう大丈夫なのですか?」
そんなモヤモヤとした気持ちを抱えながら馬車に揺られていた煬鳳だったが、凰黎に尋ねられてようやく我に返った。彼の口から発せられた言葉は、心底煬鳳の体のことを心配している。
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