10:無常因果的終結(終末)

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 先ほどまで体のことなど微塵も思い出すことはなく、ただ愛しい人の家族のことを考えていたなどとは言い辛い。煬鳳(ヤンフォン)凰黎(ホワンリィ)を安心させるように、努めて穏やかな声で彼に言った。 「もちろん平気だ。霊力を使うたびに熱くなるのとはまたわけが違うからな。一度落ち着けばそんなに苦労はしないよ」 「でも……」  凰黎(ホワンリィ)煬鳳(ヤンフォン)をぎゅっと抱きしめる。  抱きしめるというか……煬鳳(ヤンフォン)は彼の体を背もたれにして座っており、背後から凰黎(ホワンリィ)に抱きしめられている状態だ。 (滅茶苦茶こっ恥ずかしい……!)  火龍を倒しに行く道中で、なぜ抱きしめられながら馬車に乗っているのか。  意味が分からないが、意味はある。  黒炎山(こくえんざん)の動きと連動して体温が上がってしまう煬鳳(ヤンフォン)が、皆と一緒に歩いて黒炎山(こくえんざん)に向かうのは危険だ。頻繁に黒炎山(こくえんざん)が活動すれば、その都度煬鳳(ヤンフォン)も歩みを止めて苦しまなければならない。  今のところ、そういった事態にはなっていないのが幸いではあるが。  そんな感じで皆に心配された結果、なぜか『馬車で馳せ参じる』ことになってしまったのだ。  とんだ特別待遇になってしまった。  役立たずだと自分でも思うが、蓬静嶺(ほうせいりょう)とて無造作に嶺内に転がしておくわけにもいかないだろう。
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