110人が本棚に入れています
本棚に追加
雪岑谷の門弟――末端の門弟は知らないだろうが、とりわけ一代弟子たちは彼に何が起こっているのかをよく理解している。だからこそ五行盟においても瞋砂門に寄り添うような意見ばかりを唱えてきた。黒冥翳魔のことで煬鳳を糾弾したときなどが顕著だろう。
彼らを説得するためには、吾太雪の無事な姿を見せ、彼の言葉を聞かせること。それしかないのだ。
そしてもう一つ気になること。それを確かめるために煬鳳は車帷を捲り、外を歩く彩藍方に小声で問う。
「な、藍方。瞋熱燿は? あいつはどうしてる?」
「ああ……思いつめた顔はしてるけど……大丈夫だろ、多分」
ちらりと後方の隊列を見やって、彩藍方は答える。
昨夜、誰が黒炎山に向かうかという話になったとき、瞋熱燿は真っ先に手をあげた。
『僕に、行かせて下さい! お爺様が……火龍が瞋九龍の姿をしている以上、瞋砂門の門弟は誰一人、今回の黒炎山行きを疑うことはないでしょう。恐らく瞋九龍は黒炎山に集めた者たちを、かつての黒冥翳魔のように火龍復活の餌にするつもりです。そうすれば復活も少し早まるでしょうから』
最初のコメントを投稿しよう!