10:無常因果的終結(終末)

7/64
前へ
/1358ページ
次へ
 瞋熱燿(チェンルーヤオ)の言葉にみな青ざめた。瞋九龍(チェンジューロン)の行動は非常に分かりやすい。煬鳳(ヤンフォン)たちに正体を知られた以上、なりふり構ってはいられないということ。 『瞋砂門(しんしゃもん)の中で事情を知っているのは僕しかいません。僕が黒炎山(こくえんざん)に行ってしまった瞋砂門(しんしゃもん)の門弟たちを説得します。少しでも戦力を削ることができるなら……』  幸いにして彼の父と祖父は、険しい黒炎山(こくえんざん)を登るには足手まといだと判断され、瞋九龍(チェンジューロン)たちと黒炎山(こくえんざん)へは向かわなかった。それでも瞋熱燿(チェンルーヤオ)瞋砂門(しんしゃもん)の地下室の惨状を目の当たりにし、更には吾太雪(ウータイシュエ)からの怒りを向けられて責任を感じていたのだ。 「黒曜(ヘイヨウ)、どう思う?」  煬鳳(ヤンフォン)は膝の上に座る黒曜(ヘイヨウ)の顔を覗き込み、問いかける。せっかく煬鳳(ヤンフォン)と分離できたというのに、黒曜(ヘイヨウ)は全く空を飛ぶ様子がない。先刻の地震による体温の上昇で多少なり弱っているせいもあるのだろうが、程良い温かさの膝の上が心地よく己の翼で飛ぶのが面倒くさかっただけなのではないかと煬鳳(ヤンフォン)は思っている。  半分目を閉じうつらうつらと心地よさそうに眠っていた黒曜(ヘイヨウ)は、煬鳳(ヤンフォン)の声で片目を開けた。
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加