10:無常因果的終結(終末)

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『そうだな……あいつは瞋九龍(チェンジューロン)の所業と気づけなかった自分たちに責任を感じている。気負い過ぎは良くないが、思ったより気概のある奴だ。瞋砂門(しんしゃもん)でも俺たちのことを守ろうとしてくれた。信じて任せてもいいんじゃないか』 「随分信頼してるんだな、瞋熱燿(チェンルーヤオ)のこと」  煬鳳(ヤンフォン)の膝の上にちょこんと鎮座する黒曜(ヘイヨウ)は、体を膨らませながら『まあな』と言って胸を張る。どこからどう見ても、かつての黒冥翳魔(こくめいえいま)の一部であったとは誰も思うまい。 『初めは頼りないと思ったさ。でも変わろうと努力している奴をのけ者になんかできないだろう?』  鳥の姿で大真面目にそのようなことを言うものだから、なんだか妙な感じだ。かといって、黒曜(ヘイヨウ)の言うことは間違ってはいない。  鸞快子(らんかいし)が、瞋熱燿(チェンルーヤオ)の力を封じていた影を取り払ったことで、多かれ少なかれ彼を変えるきっかけになったのだと煬鳳(ヤンフォン)は思う。 (それにしても、まさかあれを見抜いたのが瞋九龍(チェンジューロン)だったなんて……)  瞋砂門(しんしゃもん)で起きた昨晩の出来事。鸞快子(らんかいし)は以前瞋熱燿(チェンルーヤオ)に『体の変化に気づいた人物が犯人』と助言はしたが、もや本当に指摘する者が現れる日が来ようとは思ってもみなかった。
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