10:無常因果的終結(終末)

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 そして、見破ることができるのはよほど修為の高い人物か犯人だとも言っていたが、彼らの人生においていままで、そのことに気づく者はいなかった。ならば鸞快子(らんかいし)も、凰黎(ホワンリィ)も、相当修為が高いことになる。 (俺もちょっとは、ちょっとくらいは気づいたぞ)  心の中で煬鳳(ヤンフォン)は思い直す。決して煬鳳(ヤンフォン)とて気づかなかったわけではない、はずだ。ただ……瞋熱燿(チェンルーヤオ)の存在感が薄すぎて、それまで彼のことを殆ど認識することはなかった。何より五行盟(ごぎょうめい)の関係者と知り合ったのは、霆雷門(ていらいもん)蓬静嶺(ほうせいりょう)の人々を除けばごく最近なのだ。  不意に規則的だった馬車の動きが変化し、車体が傾く。椅子から転がり落ちそうになった煬鳳(ヤンフォン)凰黎(ホワンリィ)にしっかりと抱きかかえられてしまった。 「完全に馬車が停まるまでこのままで」  何事かと思ったが、どうやら馬車が速度を緩めたらしい。 「早朝から走り通しで皆も馬も疲れているだろう。……少し休憩にしよう」  鸞快子(らんかいし)の声が外で聞こえる。煬鳳(ヤンフォン)はちらりと前方に座る吾太雪(ウータイシュエ)を見た。彼の顔色は悪く、体制を維持することはかなり困難だったのだろうと思われる。  煬鳳(ヤンフォン)吾太雪(ウータイシュエ)の前まで行くと丁寧に拝礼をした。
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