10:無常因果的終結(終末)

11/64
前へ
/1358ページ
次へ
(ヤン)殿。一つ、いいですか?」  丁度馬車から降りたところで煬鳳(ヤンフォン)は、あとから出てきた清粛(チンスウ)に呼び止められた。 「なんだ?」 「(ヤン)殿は黒炎山(こくえんざん)で暮らしていたのですよね?」 「ああ。本当に子供の頃だけ、だけどな」  煬鳳(ヤンフォン)清粛(チンスウ)の問いかけに頷く。煬鳳(ヤンフォン)黒炎山(こくえんざん)で暮らしていたことは、既に五行盟(ごぎょうめい)でも話したことだ。今さら隠す必要はなにもない。  俯き暫し躊躇ったあと、清粛(チンスウ)は再び顔をあげた。 「その……頂上まではあとどれくらいなのでしょうか? ……(ウー)谷主(こくしゅ)はかなり弱っておられます。意地と気力と責任感から黒炎山(こくえんざん)行きを申し出られましたが、とてもいまの状態では頂上まで持つとは……」  清粛(チンスウ)は悲痛な表情で首を振る。  長い間閉じ込められていた吾太雪(ウータイシュエ)は、いまこうして馬車に乗っているのが奇跡的なほど弱っているのだ。 「せめて索冥花(さくめいか)があれば……」  ぽろっと言いかけた清粛(チンスウ)は、残りの全てを煬鳳(ヤンフォン)に飲ませてしまったことをすぐに思い出し、「申し訳ありません!」と慌てて煬鳳(ヤンフォン)に謝罪した。 「いや、俺もお前に索冥花(さくめいか)を分けて貰った身だからさ。謝らないでくれよ」  気まずい空気の中、頭を下げる清粛(チンスウ)煬鳳(ヤンフォン)は止める。
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加