10:無常因果的終結(終末)

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「自分で差し上げたものをあとからどうこう言うなんて、本当にお恥ずかしい限りで申し開きもありません。私とて医術に携わる身。……他に薬ならいくらでもあります。必ず、(ウー)谷主(こくしゅ)のお体の苦痛を少しでも和らげ回復できるよう努力いたします!」 「ならさ。吾谷主(ウーこくしゅ)のことは俺が見ててやるから、清粛(チンスウ)はこの辺りで使える薬草がないか見てきたらどうだ? 結構使えるの生えてると思うぞ」  煬鳳(ヤンフォン)たちの会話に入ってきたのは彩藍方(ツァイランファン)だ。幼い頃から黒炎山(こくえんざん)で暮らしていたこともあって、彼の表情はいつもと変わらず平然としている。馬に乗る者も多い中、彼は徒歩でずっと煬鳳(ヤンフォン)たちの馬車と共に歩いてきたが、彼は他の者たちほど疲れてはいないらしい。  清粛(チンスウ)煬鳳(ヤンフォン)彩藍方(ツァイランファン)、二人を交互に見やる。だが迷っている暇はないと判断したらしい。 「では……(ツァイ)二公子、お願いいたします!」  頭を下げ清粛(チンスウ)は、小走りに森の奥へと走って行った。  煬鳳(ヤンフォン)はおもむろに彩藍方(ツァイランファン)に語り掛ける。 「今の話、本当なのか?」 「もちろんさ。……まえにいくつか宝器作ったときに錬丹術の実験がてら、ちょっと材料探しに出たんだよ。そうしたらビックリするような薬草ばかり生えてて驚いたんだ」 「そういや、いま思えばあんまり見ない草木が色々生えてたな。小さかったんでなにも気にしたことなかったけど」
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