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煬鳳は黒炎山の麓の森には様々な草が生えていたことを思い出した。幼かった煬鳳はもっぱらそこに生えているもののうち、食べられるものを探すことに必死だったし、それがいかに貴重なものであったかなど当時はなにも分からなかったのだが。
「黒炎山は火龍や黒冥翳魔の力、それに火山本来の力とか……とにかく色んなものがこの辺り一帯に影響を及ぼしているんだ。俺たち彩鉱門や鋼劍の人たちがその地熱を利用したことで優れた武器を作り出していたように、麓の森にもその恩恵は表れていたってことさ」
「その割には薬草を探しに来る奴はいなかったな」
「……多分、黒炎山が曰く付きの山なんで、わざわざ薬草を採りに来る奴もいなかったんだろうな。価値を知ってる奴が見たら目ん玉ひんむくぜ」
黒炎山はかつて噴火で近隣の村にも大きな被害を与えている。近寄りたくないと思うのは当然だろう。
なるほどなあ、などと感心していると、彩藍方に頭を小突かれた。
「煬鳳。俺は清粛の代わりに吾谷主の様子を見てないといけないからさ。お前は凰黎と一緒に少し休んで来いよ。このあとは暫く二人でゆっくりも出来ないだろうしな」
凰黎は二人の会話を邪魔しないようにか、少し離れた場所で煬鳳を待っている。それに気づいた彩藍方の、彼なりの気遣いなのだろう。
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