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「有り難う。そうさせてもらうよ」
彩藍方の申し出に礼を言うと、煬鳳は凰黎と連れ立って休めるところがないかと辺りを見回す。近くには川が流れている。その川の周りにはで馬に水を飲ませたり、自らもまた水を飲む者もいるようだ。
「煬鳳、喉が渇いていませんか? 川の脇で我々も休みましょう」
煬鳳を気遣うように凰黎は彼の手を取る。手を引かれるままに煬鳳は傍にある岩に腰を下ろした。
遠くのほうでは静泰還と彩鉱門の掌門である彩天河が何やら話をしている。休憩中とはいえ彼らはここにいる門弟たち全てを率いる身。他の者たちと同じようには休むことはできないのだろう。
「こんな悠長にしていて、大丈夫かな」
瞋九龍のほうが先に黒炎山へ向かったことを考えると些か不安にもなる。しかし休まず動き続けることは難しい。自分一人ならまだしも、同行する者たちがいるのだから当然だ。
「大丈夫かといえば、決して安心はできないでしょうね」
「だよな……」
言葉とは裏腹に、凰黎の口調は落ち着いている。
瞋九龍と共に山頂を目指す者たちの中には、霆雷門の雷閃候と雷靂飛もいる。鬱陶しい奴らではあるが、それでも火龍の餌になるようなことがあれば寝覚めが悪い。
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