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そんな不安を察するかのように凰黎は煬鳳の手を握る。顔をあげた先にいるのは、普段と変わらずに淡雅な表情を湛える凰黎だ。
「ですが、先に向かった瞋九龍率いる五行盟の面々もまた、休まねばならないのは我々と同じです。瞋九龍一人なら無茶もできるのでしょうが、盟主という体裁を考えれば門弟たちを気遣うことはしなければならないかと。そうでなかったら、たとえ自分の体が復活するための捨て石だったとしても、それまでに逃げられてしまうでしょうし……ね」
決して楽観視はできないが、それでも凰黎の言葉に少しだけ心が軽くなる。
「凰黎の言う通りだな。途中で逃げられたら元も子もないよな。……有り難う、凰黎」
「いいえ。……雷公子とは共に清林峰で事件を解決したこともあります。私も彼らの命を無駄に散らしたいとは思いませんから……そうでしょう?」
「うん。あいつらは面倒な奴だけど、なんだかんだ五行盟にいるときも俺のこと気に掛けてくれたしさ。少なくとも火龍の餌にはしたくないな」
「私も同感です」
煬鳳の頭を抱きよせた凰黎は控えめに煬鳳の頭を撫でる。急にそんなことをされたので煬鳳は驚いて固まってしまう。
「きゅ、急にどうしたんだ?」
その理由が分からずに煬鳳は凰黎に問いかけた。
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