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「恋人の頭を撫でるのに理由が必要ですか?」
「……ない」
「でしょう?」
ない。
しかし分からない。
凰黎という人は急に距離が近づいたと思うと、途方もないほど遠くに感じることのある人だ。
(まあ、考えてみれば仙界から偉いやつが凰黎を連れ帰ろうとするほどの逸材、なんだもんなあ)
非凡とはいえあくまで煬鳳は人の範疇であって、人界を超えて使者がやってくる凰黎は人の範疇を完全に超えている。
ときおり凰黎という人の存在が、とても遠く感じられてしまうのは彼のそういったことに由来しているのかもしれない。
だとしたら――とても彼は孤独なのだろう。
常に強くて闊達な彼が、煬鳳にだけ見せた小さな弱さ。恒凰宮での出来事は、何度も超えた二人の夜のなかで忘れられない夜だった。
(俺は、凰黎のこと励まして、元気づけてやりたかったけど、できてるのかな……?)
そんな不安もちらついている。
「なあ、凰黎?」
「どうしました?」
いつもの笑顔を向ける凰黎の耳元で煬鳳は囁く。
「俺は凰黎のことちゃんと……大事にしてるか? 凰黎が辛いとき、支えられてるか?」
「突然どうしたんです?」
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