10:無常因果的終結(終末)

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「いや、ただ心配になっただけだ。……これから瞋九龍(チェンジューロン)とやりあわないといけない。はじめは火龍を鎮めるだけのはずだったけど、あいつの意志が瞋九龍(チェンジューロン)の中にあるのなら、絶対に避けて通ることのできない戦いだ。だから……」  瞋九龍(チェンジューロン)の強さは本物だ。中身が火龍であるのなら尚更なのかもしれないが、その強さは圧倒的で、皆が語り継ぐ伝説の英雄そのものだった。  ――勝てるか分からない。  数ある門派の名だたる面々も瞋九龍(チェンジューロン)の討伐隊にはいるのだが、彼らの力をもってしても果たして瞋九龍(チェンジューロン)を抑えられるのか。  瞋砂門(しんしゃもん)で彼と相対したときのことを思い出すと、不安は拭えない。  だからこそ、今のうちに確かめたい。自分は彼にとって良い伴侶であるのか、と。 「私は……」  凰黎(ホワンリィ)の手が、煬鳳(ヤンフォン)の頬に触れた。どきりとして思わず煬鳳(ヤンフォン)は肩を竦めた。優しく労わるように、何度も頬を撫でつける。頬を滑る掌が心地よくもあり、同時に煬鳳(ヤンフォン)はいいようもない胸騒ぎも覚えた。 「私は貴方がいつも傍にいて元気な笑顔を見せてくれるのなら、十分すぎるほど元気づけられます。貴方の胸が鼓動を刻む音が聞こえたら、それが何よりの支えになるでしょう。掌の温かさを感じること、頬に触れられること……心と体が繋がっていると感じられること。どれも私にとってこの上ない幸せであり、勇気であり、支えです」 「お、大げさだな……」
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