10:無常因果的終結(終末)

19/64
前へ
/1358ページ
次へ
 暫しの休憩も終わりが近づき、再び山頂を目指すために各々が徐々に元の持ち場へと戻り始める。 「煬鳳(ヤンフォン)。具合はどうだ?」  煬鳳(ヤンフォン)が再び馬車に乗り込もうとすると、鸞快子(らんかいし)に呼び止められた。彼の傍には清粛(チンスウ)と、もう一人見知らぬ青年が立っている。 「大丈夫、悪くないよ。……それより、瞋熱燿(チェンルーヤオ)の隣にいるのは誰なんだ? 初めて見る顔だけど……」  琥珀色の衣袍に身を包んだ青年は柔和な微笑みを浮かべ、煬鳳(ヤンフォン)たちに軽く会釈をした。銀糸の如く流れる髪が優雅に揺れ、美しい相貌を際立たせる。穏やかで品のある態度は、どこか高貴さを感じさせた。 「ああ、こちらは――」  鸞快子(らんかいし)が青年を紹介しようとしたそのときだ。青年が突然煬鳳(ヤンフォン)凰黎(ホワンリィ)に走り寄り、両手で二人の手を握った。これには煬鳳(ヤンフォン)凰黎(ホワンリィ)も、驚いて目を瞠る。そんな二人の驚きもどこ吹く風で青年は喰いつかんばかりに煬鳳(ヤンフォン)たちに迫った。 「(ヤン)様! それに(ホワン)様! お久しぶりです! 鼓牛(グーニゥ)です!」 「は!?」  記憶の中を遡り、その名をどこで聞いたのかを必死で思い出す。けれどすぐに出てはこず、 「……ええと? 何だって?」  もう一度聞き返してしまった。 「煬鳳(ヤンフォン)! もしかして彼は、清林峰(せいりんほう)索冥花(さくめいか)を求めていた牛の彼、なのでは……」
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加