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暫しの休憩も終わりが近づき、再び山頂を目指すために各々が徐々に元の持ち場へと戻り始める。
「煬鳳。具合はどうだ?」
煬鳳が再び馬車に乗り込もうとすると、鸞快子に呼び止められた。彼の傍には清粛と、もう一人見知らぬ青年が立っている。
「大丈夫、悪くないよ。……それより、瞋熱燿の隣にいるのは誰なんだ? 初めて見る顔だけど……」
琥珀色の衣袍に身を包んだ青年は柔和な微笑みを浮かべ、煬鳳たちに軽く会釈をした。銀糸の如く流れる髪が優雅に揺れ、美しい相貌を際立たせる。穏やかで品のある態度は、どこか高貴さを感じさせた。
「ああ、こちらは――」
鸞快子が青年を紹介しようとしたそのときだ。青年が突然煬鳳と凰黎に走り寄り、両手で二人の手を握った。これには煬鳳も凰黎も、驚いて目を瞠る。そんな二人の驚きもどこ吹く風で青年は喰いつかんばかりに煬鳳たちに迫った。
「煬様! それに凰様! お久しぶりです! 鼓牛です!」
「は!?」
記憶の中を遡り、その名をどこで聞いたのかを必死で思い出す。けれどすぐに出てはこず、
「……ええと? 何だって?」
もう一度聞き返してしまった。
「煬鳳! もしかして彼は、清林峰で索冥花を求めていた牛の彼、なのでは……」
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