10:無常因果的終結(終末)

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 煬鳳(ヤンフォン)の袖を引き、凰黎(ホワンリィ)が神妙な面持ちで言う。  ――いや、まさか?  確かに清林峰(せいりんほう)に現れた空飛ぶ牛は自分のことを鼓牛(グーニゥ)だと名乗っていたような気がする。しかしだ。しかし、いくら何でも目の前の高貴そうな青年がまさか……煬鳳(ヤンフォン)はもう一度己の手を握る青年を見る。  ――どこからどう見ても、牛には見えないな。  しかし煬鳳(ヤンフォン)の結論はすぐに打ち砕かれてしまった。 「さすがは(ホワン)様、よく覚えていて下さいました! そうです。あのとき(チン)様やお二方の優しさに助けられ、索冥花(さくめいか)を譲っていただいた鼓牛(グーニゥ)です!」 「えーっ!? だってお前、どう見たっていま、人の姿じゃないか!」 「牛だって人の姿になるときもあります」  煬鳳(ヤンフォン)の言葉に平然と鼓牛(グーニゥ)は言ってのける。  考えてもみれば、鼓牛(グーニゥ)は空を飛ぶ牛なのだ。帰るときも空を飛んでいずこかに帰って行った。  ならば、人の姿に変ずるくらいは造作もないことなのではないか?  そう考えたら「まあ、いいか」という気持ちになってしまった。 「実はあのときのご恩を返しに参りました」
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