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鼓牛がいずこからか用意した豪華な馬車に吾太雪を寝かせ、煬鳳たちは乗ってきた馬車に乗り込んだ。清粛も吾太雪と同じ馬車を希望したのだが、鼓牛が話がしたいと頼んだため、暫くの間門弟に吾太雪の世話を頼むことにした。
「恩返しなんてそんな……ですが、貴方の持ってきて下さった霊薬は吾谷主の体を著しく回復してくれました。感謝してもしきれません」
このご恩は必ず――その言葉の通り、鼓牛は煬鳳たちの助けになるものを沢山運んできてくれたのだ。
吾太雪を寝かせたまま運べる馬車に貴重な霊薬。そして薬草の類も様々だ。
聞けば清粛が薬草を探しに森の奥に行ったときに、鼓牛が彼を見つけて声をかけてきたらしい。
「我々が受けたご恩に比べれば、このようなことは極めて僅かな恩返しに過ぎません。どうか遠慮なく受け取って頂ければと思います」
「ということは、貴方の主は無事に回復されたのですね?」
凰黎の問いかけに鼓牛は少し困った顔で「実は……」と頭を掻く。
「正直に言えば索冥花は主の怪我を癒やすために多大な効果をもたらして下さいました。ですがそれでも索冥花だけでは、主の根本的な治療はままならなかったのです。……ですが色々ありまして、結果的に皆様のお陰で僥倖にも主は回復されました」
なんとも奥歯にものが挟まったような説明だ。
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