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索冥花は補助的に役に立ったが完治には至らず、しかし主はとにかく回復した。ということだろうか。
「まあ、回復したなら良かったな。主を大事にしろよ」
「はい!」
元気に鼓牛は返事を返す。
但し疑問点はいくつかある。まず鼓牛の持って来た霊薬は、それだけでも相当凄い代物だった。彼の霊薬のお陰で吾太雪の顔色は土気色から桃色に変わり、それまでまともに歩くこともままならなかった彼が、短時間ではあるものの自力で歩けるようになったのだ。
彼がこれまで拘束されてきた年月を考えれば、驚くほどの効能だといえよう。
索冥花を知る人々はその薬を『神薬』などと呼ぶが、それはあくまで五行盟や一部の場所だけの話だ。恐らく鼓牛の主は、彼が持って来たような素晴らしい霊薬すら効かないほどの重症だったのだろうが、それ以上の方法を見つけることができず、藁にも縋る思いで索冥花を頼ったに違いない。
索冥花だけでは全てを解決することはできなかったが、結果的に鼓牛の主を救うことができたのならそれはそれで何よりだ。
「後ほど主も改めて皆様にお礼を申し上げに参ります」
「そんな、そこまでして頂いては申し訳ありません。どうかお気遣いなく……」
「いえ! これは主の意向でもあらせられるのです」
「で、でも……」
清粛と鼓牛とのやり取りは続いている。
(いや、俺たち瞋九龍と戦いに行くんだよな……?)
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