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「感謝する。……もちろん、凰黎の懸念である煬鳳のことは、何を差し置いても守ってみせる。安心して欲しい」
「貴方に守って頂かなくても、私がちゃんと守ってみせます」
対する凰黎は、鸞快子の言葉に対して幾分か棘のある返答を返す。言われてしまった鸞快子は苦笑しながら、
「それも当然ながら理解している」
と凰黎に言ったのだった。
鸞快子の相談ごとはほんの僅かな時間で終わり、鸞快子は隊列の先頭に戻るために別れを告げる。煬鳳たちも馬車へ戻ろうと踵を返すと、鸞快子が煬鳳の名を呼んだ。
「煬鳳」
「なんだ?」
別れ際に呼ばれ、振り返った煬鳳の頭に鸞快子の掌が載せられる。
「有り難う」
鸞快子はただ一言――そう言って、隊列の先頭へと戻っていった。
(なんであんなこと言ったんだろう。あんな……)
そんなはずは絶対にない。
けれど煬鳳には……彼がどこかに行ってしまうような、そんな言葉に聞こえたのだ。
ときおり馬車の中から外の様子を確認していた煬鳳は、山頂が近づいてきたことを悟り「そろそろ降りるよ」と御者を務めていた門弟に呼び掛けた。
清粛と鼓牛も煬鳳の呼び掛けを聞いて、手早く身支度を調える。
「お二人とも、お気をつけて」
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