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清粛と鼓牛は戦いに直接加わることはないため、後方で瞋九龍との戦いを見守る手筈だ。それでも彼らが馬車の中で待機しないのは、馬車の中からでは外の様子が見えず、万が一攻撃が飛び火した際に避けることもできないからだ。
(鼓牛はこのまま俺たちに付いてきていいのかな……)
恩返しに来た鼓牛は、なぜかちゃっかり煬鳳たちの馬車に乗り込んでしまった。特になにも言ってはいないのだが、どうも彼は煬鳳たちと共に山頂へ向かうつもりらしい。
――とはいえ、彼を戦いに加えるわけにもいかないので、清粛と共にできるだけ戦いの影響を受けないところに居て貰うことになった。
「煬鳳。瞋九龍は火行使いであり、火龍でもあるわけです。……翳炎の炎とは多少異なってはいても、戦いにおいて近しい性質は有効とはいえません。どうか無理はしないで」
心配そうな凰黎の声に、煬鳳は微笑みを返す。
「分かってるって。あいつとは瞋砂門で一度戦った。凰黎の言うことは十分理解してるつもりだ。だから、瞋九龍と直接戦うのは蓬静嶺に任せるからさ。頼んだよ」
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