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いくら煬鳳とて、五行相克は理解しているつもりだ。強大な瞋九龍と戦うならば水行の蓬静嶺が主戦力になるのは当然のことであるし、逆に火と火の力がぶつかり合えば火行の勢いが増し、黒炎山の噴火が早まってしまう可能性がある。
そういったことを危惧して鸞快子は先ほどの戦略を立てたのだろう。
彼の意図が分からぬ煬鳳ではない。
「蓬静嶺の威信にかけても、瞋九龍との闘いは制してみせましょう」
「うん、任せたよ。凰黎。……まあ、俺の翳炎は翳冥宮の炎であって、正確には普通の炎とは違うから火行じゃないんだけどな。でも、この山自体が翳炎の影響を受けている以上、用心するに越したことないよな」
肝心なところを人任せにするのは心残りではあるが、煬鳳は煬鳳で重要な役目を任されている。だから、文句などを言っている場合ではないのだ。
「ここからは隊列を変えて進む。蓬静嶺の門弟は前に。彩鉱門は彼らのあとに続くように。……清林峰は最後尾について進むこと。私と煬鳳の二人、そして鉄鉱力士は最後尾につき、清林峰を含む支援部隊を守る。……とはいえあくまでこれは瞋九龍と遭遇するまでの話。乱戦状態になったら各々の判断で行動するように!」
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