10:無常因果的終結(終末)

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 鉄鉱力士(てっこうりきし)のうち翼の生えた一体は、吾太雪(ウータイシュエ)を抱え上げている。鼓牛(グーニゥ)の霊薬がなかったら、恐らくは抱えることも難しかっただろう。 「煬鳳(ヤンフォン)。こちらだ」  声に振り返ると既に鸞快子(らんかいし)は最後尾で煬鳳(ヤンフォン)を待っている。 (ここまで皆を引っ張ってきた鸞快子(らんかいし)が切り込み役ではなくしんがりを務めるってのも、不思議なもんだ)  しかし彼はかつて蓬静嶺(ほうせいりょう)の客卿だったとしても、水行使いかどうかは定かではない。ゆえに彼を蓬静嶺(ほうせいりょう)と同列に扱うことは難しいだろう。  加えて煬鳳(ヤンフォン)と二人、それに数体の鉄鉱力士(てっこうりきし)だけで後方の守りを固めるなどということは、鸞快子(らんかいし)にしかできない芸当だ。  煬鳳(ヤンフォン)の視線に気づいたのか、振り向いた鸞快子(らんかいし)の視線は煬鳳(ヤンフォン)と交錯する。口元に笑みを湛えた鸞快子(らんかいし)は、再び前方に向き直ると煬鳳(ヤンフォン)に言った。 「前線には出るなと言ったが、いざ戦いになればそうも言っていられなくなるだろう。君がどういった人間なのか、私はよく知っているつもりだ。支援部隊の守護は私に任せ、君は思うままに行動しなさい。――ただし」 「無茶はするな、だろ?」  分かってる、と言わんばかりに煬鳳(ヤンフォン)はにやりと笑う。 「いいや、少し違う」  しかし、その予想は少し異なっていたらしい。 「凰黎(ホワンリィ)を悲しませないように」 「……」
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