10:無常因果的終結(終末)

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 あとに続いた彩鉱門(さいこうもん)もすぐに彼らの元に追いつくと、戦いの輪に加わった。  しかし、瞋九龍(チェンジューロン)には有効な水行の攻撃も、霆雷門(ていらいもん)の雷撃にはやや苦戦する。そのため、金行である彩鉱門(さいこうもん)の援護はとても重要な役割を果たすのだ。 (彩藍方(ツァイランファン)たちも頑張ってるかな……)  恐らく霆雷門(ていらいもん)とて本気で殺しに来るわけではないだろう。しかし残された時間はそう多くはない。瞋九龍(チェンジューロン)が一声「殺せ」と言えば、一転してこの場は血の色に染まってしまう。 「(ヤン)掌門(しょうもん)」  耳慣れない呼び方に振り向くと、そこにいたのは清粛(チンスウ)たち後方支援部隊と共にやってきた吾太雪(ウータイシュエ)だ。  どうやらそろそろ、頃合いらしい。煬鳳(ヤンフォン)は彼の言いたいことをすぐに悟った。  彼は雪岑谷(せきしんこく)の門弟たちを止める為に、殆ど動かない体を引きずってここまでやってきたのだから。  煬鳳(ヤンフォン)のことを煬掌門(しょうもん)と呼んだのは――門派を纏める者同士としての、彼の気持ちだろうか。 「吾谷主(ウーこくしゅ)。準備はいいですか? 雪岑谷(せきしんこく)の門弟全体に聞こえる場所まで移動するわけだから……ちょっと荒っぽいですよ」  そして煬鳳(ヤンフォン)が彼に対して下手なりに丁寧な呼び掛けをするのもまた、年上の先達に対する敬意でもある。  吾太雪(ウータイシュエ)煬鳳(ヤンフォン)の言葉に「もちろんだ」と頷くと、前に進み出た。
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