10:無常因果的終結(終末)

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 彼を戦いの中心へと連れて行くのは煬鳳(ヤンフォン)の役目だ。  火口へと辿り着く前に炎の礫が飛んできたように、彼らが初めから話を聞くなど思ってもいなかった。何故なら――火龍である瞋九龍(チェンジューロン)が彼らを扇動しているのだから。頃合いを見て戦いの間に割って入り、注目を集め話を聞かせること、それが煬鳳(ヤンフォン)が請け負った役目だった。 「必ず門弟たちを説き伏せてみせましょう。お願いいたします……!」 「よし!」  煬鳳(ヤンフォン)鉄鉱力士(てっこうりきし)の背を叩き「乗るぞ!」と呼び掛けた。言葉を合図に鉄鉱力士(てっこうりきし)は背中に二人が乗れるよう体を屈める。煬鳳(ヤンフォン)吾太雪(ウータイシュエ)と共に鉄鉱力士(てっこうりきし)の背に乗ると、今度は鸞快子(らんかいし)の方に振り返った。 「鸞快子(らんかいし)、ちょっと行ってくるよ!」 「援護は必要か?」 「大丈夫だ! でも、万が一危なくなったときだけ頼む!」  呼び掛けた鸞快子(らんかいし)に応えると、煬鳳(ヤンフォン)黒曜(ヘイヨウ)を袖から呼び出す。 「黒曜(ヘイヨウ)、合図を頼む!」 『任せろ!』  黒曜(ヘイヨウ)は二度三度鳴き声をあげながら前方に飛んでゆく。  煬鳳(ヤンフォン)は意識を集中させ、片手に霊力を集中させる。右手に集まった霊力は翳炎(えいえん)へと姿を変え、激しい炎の渦を生み出した。 「鉄鉱力士(てっこうりきし)、飛べ!」
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