10:無常因果的終結(終末)

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 打ち出した炎は凄まじい風圧とともに、軌道上で戦っていた門弟たちを吹き飛ばす。予め黒曜(ヘイヨウ)の合図を聞いていたものたちは、翳炎(えいえん)の渦へと巻き込まれる前に飛び退った。  風を切って飛びあがった鉄鉱力士(てっこうりきし)翳炎(えいえん)のあとを追うように突き進む。予め清粛(チンスウ)が霊力を注ぎ込んでいてくれたお陰で、その速度に追いつけるものは誰一人いなかった。 「ここで止まれ!」  煬鳳(ヤンフォン)の合図で鉄鉱力士(てっこうりきし)は飛行を止める。狙い通り、二人が降り立ったのは火山の頂上手前――戦う門弟たちの姿が一望できる場所だった。 (凰黎(ホワンリィ)……)  瞋九龍(チェンジューロン)と戦う凰黎(ホワンリィ)静泰還(ジンタイハイ)の姿が見える。不利ともいえないが有利とも言い難い、一進一退の攻防を続けているようだ。神侯(シェンホウ)の淡い燐光(りんこう)が残像を残しながら美しい軌道を描く。その美しさに暫し見惚れそうになり、慌てて煬鳳(ヤンフォン)は邪念を振り払った。  そして凰黎(ホワンリィ)たちから少し離れた場所では彩藍方(ツァイランファン)瞋熱燿(チェンルーヤオ)が他の門弟たちと争っている。いまは戦わねばならぬとはいえ、理由が分かれば戦う必要などなくなる者たちだ。本気でやりあうわけにもいかず、苦心しているように見える。 「!」  背後から迫る剣を、永覇(ヨンバ)で叩き落とす。こうしているいまも煬鳳(ヤンフォン)たちを狙う者は少なくはない。
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