10:無常因果的終結(終末)

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 雪岑谷(せきしんこく)の門弟たちの目が先ほどまで共闘していたはずの瞋砂門(しんしゃもん)のに向けられた。なにも知らない瞋砂門(しんしゃもん)の門弟たちは驚きと混乱で戸惑うばかり。どうしていいかも分からずにおろおろと門弟同士で顔を見合わせ狼狽えている。 「よくも吾谷主(ウーこくしゅ)を……!」  誰かが言った。 「許さない! 谷主(こくしゅ)の苦しみを、同じ目に遭わせて……!」  そしてまた、誰かが剣を取り、瞋砂門(しんしゃもん)に向ける。 「待て! 待つのだ! 見誤ってはならぬ!」  吾太雪(ウータイシュエ)が門弟たちに呼び掛けた。 「聞いて欲しい。確かに儂を捕らえたのは瞋九龍(チェンジューロン)だが、瞋砂門(しんしゃもん)は決して悪ではない! 儂を助け出すことに協力してくれたのは他でもない、瞋砂門(しんしゃもん)(チェン)公子だ!」  吾太雪(ウータイシュエ)は隅のほうでおろおろしていた瞋熱燿(チェンルーヤオ)を指差す。名指しされたことで驚いた瞋熱燿(チェンルーヤオ)だったが、吾太雪(ウータイシュエ)に手招きされ躊躇いながらも煬鳳(ヤンフォン)たちの元へと走り寄った。
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