10:無常因果的終結(終末)

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(そうか、嶺主(りょうしゅ)様は……ずっとそのことを抱えていたんだ……)  大切な妻子を一度に失った静泰還(ジンタイハイ)の気持ちを思えば、そして凰黎(ホワンリィ)塘湖月(タンフーユエ)がいかに彼を父のように慕っていても頑なに嶺主(りょうしゅ)としか呼ばなかった理由を考えれば、彼の悲痛な想いはいかほどだろうか。 「はん。だったらどうなんだ?」 「はっきり答えろ!」  普段は物静かで温厚な静泰還(ジンタイハイ)。彼がいま、激しい怒りを瞋九龍(チェンジューロン)に燃やし彼のことを睨みつけている。今にも斬りかからんばかりの勢いで。  その事実にみなは驚き、止めることもせず呆然と成り行きを見守っている。  瞋九龍(チェンジューロン)はといえば、怒る静泰還(ジンタイハイ)とは対照的ににやにやと口の端を歪めながら笑っていた。 「おお、そうだ。そういえばあの一件でお前の妻子は蓬静嶺(ほうせいりょう)の襲撃に巻き込まれて命を落としたのだったな。……あのときは随分長い間お前が五行盟(ごぎょうめい)に顔も出さなくなり、五行盟(ごぎょうめい)存続すら危うくなってさすがに焦ったわい」 「私の質問に答えよ!」 「ああ、怒鳴るな。喚くな。……いいだろう、教えてやろう。結論から言えばその通りだ」
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