10:無常因果的終結(終末)

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 瞋九龍(チェンジューロン)に言い放ったのは凰黎(ホワンリィ)だ。それまで静泰還(ジンタイハイ)を止めることに専念していた彼だったが、瞋九龍(チェンジューロン)の言葉を聞いて口を開いた。 「瞋砂門(しんしゃもん)だって清林峰(せいりんほう)を襲撃しましたよね? 瞋砂門(しんしゃもん)掌門(しょうもん)は三百年前から変わらず貴方です。口では仕組んだだけ、周りの者が燃やしたのだと仰いますが、思うような効果が得られなかったときに備えて瞋砂門(しんしゃもん)の門弟たちを引き連れて襲撃に参加したのでしょう? 結局、貴方はどうあっても清林峰(せいりんほう)を滅ぼすつもりだった。違いますか?」 「はっはっは!! 鋭いな! 実に明察秋毫たる君子なり。儂の手駒でなかったことが実に惜しい。そなたの言う通りだ」  満足げに褒めちぎった瞋九龍(チェンジューロン)に対し、凰黎(ホワンリィ)は心底嫌そうな表情を彼に向ける。 「当時の清林峰(せいりんほう)は無償で貧しい人の怪我や病気を診てあげていたそうです。そして門派に関係なく、困っている人たちの力になろうとしていた。そんな彼らを、貴方の勝手な言い分で滅ぼそうとすることなどあっていいわけがありません!」 「(ジン)公子よ。それが一体どうしたというのだ? 人の命など火龍にとっては海に浮かぶ藻屑も同じ。そんな奴らがこの儂を動けないほどに打ち倒した……こんな屈辱があってなるものか!」  吹き上がる憤怒を燃え盛る炎のように吐き散らし、瞋九龍(チェンジューロン)はその場にいた全てのものに向かって怒声をあげた。
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