10:無常因果的終結(終末)

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「だからこそ――儂は、儂を倒した瞋九龍(チェンジューロン)に成り代わってやろうと思ったのだ。復活までの間、奴の体を利用させて貰うことにした。いかに強い力を持っていようとも所詮は人であり、乗っ取ることは容易きこと。ついでに奴らの子孫にも、気取られぬよう霊脈を封じてやったのよ」  龍とかここまで恐ろしいものなのか――目の前にいるのは人の姿をした、心智だけが龍のはずなのに。なぜこうも彼の怒りが浴びせられるたびに、足が震えるのだろう。  決して怖じ気づいたわけではない。それでも彼の発言の一つ一つが、あまりに人気離れした考えだったので、人と龍との考え方の隔たりに対し煬鳳(ヤンフォン)は戦慄した。  同時に瞋九龍(チェンジューロン)の子孫たち、瞋熱燿(チェンルーヤオ)や彼の父親や祖父たちが理不尽に力を奪われたことが気の毒でならない。本来なら彼らだって幼い頃よりもっと才能を花開かせる機会があったことだろう。  瞋熱燿(チェンルーヤオ)は愕然とするあまり、言葉も出せず煬鳳(ヤンフォン)の背後で震えている。怒りをぶつけていいのか、悲しんでいいのかわからないのだ。自分が瞋九龍(チェンジューロン)だと思っていたものは火龍であり、しかし彼が生まれたときからずっと瞋九龍(チェンジューロン)は火龍であった。  お爺様と呼べばいいのか、火龍と呼べばいいのか。  しかし彼にとっての高祖父は、紛れもなく目の前にいる。  火龍の心智を宿す瞋九龍(チェンジューロン)その人なのだ。
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