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「当然だ。狂乱状態に陥った黒冥翳魔は、全てを恨むあまり己の体が崩れることも躊躇せず怒りに任せて力を振るった。奴の翳炎はこの山の岩漿とも相性が良く、何より雨や風で消えることはない。上手く育ててやれば永遠に消えることはなく燃え続ける、たとえ当人が魂魄だけの存在になって封印されようとな! 儂が復活するための養分としてこれほど最適な素材はない!」
やはり、と思うしかない。
瞋九龍の正体が判明してから、薄々そのような予感はあったのだ。
翳黒明がこの場にいなくて良かったと思うとともに、いま煬鳳と共にいる翳黒明の片割れ――黒曜はどのような思いでいまの話を聞いていたのかと思うと胸が痛む。
「儂は『黒冥翳魔を倒し平和を取り戻す』という尤もらしい大義名分を掲げ、五行使いたちに呼び掛けた。そうして魂魄だけを上手く残し、翳炎を火口で燃やし続けることに成功したのだ! お陰で随分と想定よりも早く、儂の体が復活の兆しを見せてくれた。本当に黒冥翳魔には感謝しておるぞ! はっはっはっはっは!」
笑いが収まらぬうちに、煬鳳の肩に留まっていた黒曜が瞋九龍へと飛び掛かった。
「おいっ! 黒曜!」
止めようとしたが間に合わず、しかしもっと驚いたのは黒曜だけではなくもう一人瞋九龍に飛び掛かる者がいたからだ。
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