110人が本棚に入れています
本棚に追加
「嶺主様! 待って!」
凰黎の制止を振り切った静泰還が、黒曜と共に瞋九龍に斬りかかる。二人とも先ほどからずっと怒りを抑え続けていたのだ。先ほどの瞋九龍の言葉によって、我慢も限界を超えたのだろう。
「笑止!」
それでも、たった一振り槍で払っただけで、二人は地面に叩きつけられる。すぐさま立ち上がってもう一度斬りかかろうとする静泰還を、凰黎が懸命に押さえている。
「お願いです! 怒りに任せて闇雲に戦うのはお止め下さい!」
「行かせてくれ、阿黎! 私は、この日をずっと、待っていたのだ……!」
「できません!」
力任せに振りほどこうとする静泰還を、それでも凰黎は行かせない。叫ぶ声は泣き声にも似て、煬鳳のこと以外でここまで彼が誰かのために必死でなにかを言うさまを煬鳳は初めて目の当たりにした。
煬鳳は腕の中で暴れる黒曜を宥めながら彼に言い聞かせる。
「黒曜、お前も行くな。本気で瞋九龍を倒すなら、全員でかからなきゃ」
『そんな悠長なことできるか! 奴は、俺のことを、火龍復活のために火山に封じたんだぞ! 許せるか!』
「許せないなら、返り討ちにはされたくないだろ? まあ、見てろよ」
最初のコメントを投稿しよう!