10:無常因果的終結(終末)

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 何をしなければいけないのかは分かっている。みなが迷い、互いの顔色を窺っていた。しかし、相手は睡龍(すいりゅう)全体ほどの巨大な龍であり、その龍が依り代にしているのは他でもない、その強大な龍を打ち倒した英雄の体なのだ。  そのような化け物相手に、果たして勝機などあるのだろうか?  瞋九龍(チェンジューロン)を見据える鸞快子(らんかいし)からは恐れも憤りも感じず、晴雲秋月が如く落ち着いている。 「ははは……! 鸞快子(らんかいし)よ。お前は儂に忠実な振りをして、かような反乱分子を率いて儂に楯突こうとは随分と大きく出たものだな?」 「それは恐縮至極。しかし私は決して己の身の丈を超えた行いなどは一切しておりませんが?」 「たわけ!」  瞋九龍(チェンジューロン)が激高し鸞快子(らんかいし)に槍を放つ。あわやと思いきや――瞋九龍(チェンジューロン)の放った槍は鸞快子(らんかいし)の袖一振りではじき返されてしまった。  ――まさか瞋九龍(チェンジューロン)の一撃を、片手で!?  鸞快子(らんかいし)が強いのは知っている。しかしここまで圧倒的だとは誰一人思ってはいない。  信じられないような光景を目の当たりにして、煬鳳(ヤンフォン)をはじめその場にいた全員が驚き言葉を失った。 「なん……だと……?」  あまりの衝撃で瞋九龍(チェンジューロン)は呆然とする。しかしすぐに気を取り直して彼は不敵な微笑みを浮かべた。 「……ふ、ふふ。いまのはかなり驚いたぞ。しかし、そのような些細なことはどうでも良い……! 儂は、儂の目的を果たすのみ……!」
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