10:無常因果的終結(終末)

50/64
前へ
/1358ページ
次へ
 龍というのは圧倒的な力を持った化け物という印象が大きかったが、三百年も人の姿を借りていると段々と人に近くなってゆくのだろうか。  不気味なほどの意地の悪い微笑みに、煬鳳(ヤンフォン)はぞわりとした。  しかし倒れ伏す周囲の状況とは裏腹に、実のところ煬鳳(ヤンフォン)はそれほど体に影響を受けているようには感じない。その理由が分からぬまま、煬鳳(ヤンフォン)凰黎(ホワンリィ)に尋ねた。 「凰黎(ホワンリィ)、大丈夫か?」  意外にも凰黎(ホワンリィ)の顔色は悪くないし、他の門弟たちと異なって倒れているわけでもない。倒れた静泰還(ジンタイハイ)を気遣うように彼のことを支えている。 「私はまだ大丈夫。……火龍は黒炎山(こくえんざん)の炎を操って我々の生命力を吸収し、力に変えようとしているようですね」 「なんて悪知恵の働く奴なんだ!」  忌ま忌ましい思いで瞋九龍(チェンジューロン)を睨みつけると、大きな声で瞋九龍(チェンジューロン)は笑う。 「はっはっは! 本当に愚かな者たちだ! 儂の餌になるためにこうしてのこのことやってくるとはな……! お陰でこれだけ大量の生気が儂の物になるということ……!」 「ふざけるな!」  怒りに任せ、鉄鉱力士(てっこうりきし)で襲い掛かったのは彩藍方(ツァイランファン)だ。仮に本人が動けずとも鉄鉱力士(てっこうりきし)瞋九龍(チェンジューロン)による力の影響を受けることはない。鉄鉱力士(てっこうりきし)は両手を広げ、瞋九龍(チェンジューロン)を押さえつけようと飛び掛かった。 「ふん!」
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加