10:無常因果的終結(終末)

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 じわじわと距離を詰め、彩藍方(ツァイランファン)の頭を砕かんばかりに片手を突き出す瞋九龍(チェンジューロン)に、彩鉱門(さいこうもん)掌門(しょうもん)が「やめろ! やるなら私からに……!」と叫ぶのが聞こえた。 「安心しろ、小僧を殺したら貴様もすぐに儂の養分となることだろう……! ふっ、はははははははははは!」  まさに彩藍方(ツァイランファン)の頭上を瞋九龍(チェンジューロン)の手が掴もうとしたその瞬間。  瞋九龍(チェンジューロン)の笑い声が終わらぬうちに、煬鳳(ヤンフォン)は力の限り叫んだ。 「凰黎(ホワンリィ)、頼んだぞーーーーーーーーーーーーーーっ!」  風のように淡青(たんせい)の袍がひらめいた。  次いで、淡い燐光(りんこう)が走り抜け、瞋九龍(チェンジューロン)の右腕を斬り落とす。 「な、なんだとおおお!?」  予想だにしなかった出来事に、瞋九龍(チェンジューロン)は切り落とされた腕の傷を抱えた。鮮やかな切り口と溢れる鮮血で辺りが真っ赤な血溜まりを作り出す。 「彩藍方(ツァイランファン)!」  素早く凰黎(ホワンリィ)彩藍方(ツァイランファン)瞋九龍(チェンジューロン)の元から引き離すと、静泰還(ジンタイハイ)の傍まで彼を連れて行った。彩藍方(ツァイランファン)が安全な場所に移動したのを確認すると、煬鳳(ヤンフォン)はその場にいる者たち全員に叫ぶ。 「みんな! 力は戻したからもう動けるはずだ、立ち上がってみろ!」  半信半疑で皆が足に力を込めると、驚くほど簡単に立ち上がってゆく。
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