10:無常因果的終結(終末)

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「どうしたんだ? 動ける!」 「動けるぞ! 力が入る!」  驚き、喜びの声が溢れ、反対に瞋九龍(チェンジューロン)からは殺意が煬鳳(ヤンフォン)に向けられる。 「小僧! 貴様一体、何をした!」 「何をしたもなにも――」  煬鳳(ヤンフォン)はにやりと笑う。 「お前と同じことをやったのさ。この火山を流れる翳炎(えいえん)の力を借りて、皆の力を戻したんだ!」 「小癪な! そのようなことを人の身でおこなって、ただで済むと思っているのか!?」  瞋九龍(チェンジューロン)の言うことは当たっている。煬鳳(ヤンフォン)翳炎(えいえん)の力をその身に吸収し、瞋九龍(チェンジューロン)に奪われかけた力を瞋九龍(チェンジューロン)と同じように操って元の持ち主の元に戻しているのだ。龍が復活するための力を煬鳳(ヤンフォン)が流用しているわけで、あまり長い間そうしていれば以前と同じように体に多大な負担がかかってしまうだろう。  瞋九龍(チェンジューロン)は皆が倒れた際に地面に転がした剣や槍を手繰り寄せ、煬鳳(ヤンフォン)に向けて放つ。その中にはついぞ先刻、鸞快子(らんかいし)に弾かれてしまった彼自身の槍も混じっている。 「いいだろう、ならば死ぬが良い!」  槍や剣が一斉に煬鳳(ヤンフォン)に向かって飛翔する。追いつく瞋九龍(チェンジューロン)は己の槍をその手に携え、煬鳳(ヤンフォン)に向けて振り下ろした。  淡青(たんせい)の光明が空を舞い、紫霄(ししょう)の光が疾駆(しっく)する。
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