10:無常因果的終結(終末)

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 三百年経ってもやはり彼の根底は龍である。どんなに長く人間の姿をとろうとも、獣の戦い方は変えられないのだ。  ――特に、戦い方を考える余裕が無いときは。  つまり、二人ともやはり善戦しているのだ。  周りの門弟たちは彼らを助けることもできず、ただ見守っている。三人の戦いが激しすぎて、行動を起こす隙間も見つからないのだ。  煬鳳(ヤンフォン)の体には瞋九龍(チェンジューロン)が火山から吸収しようとした力が絶えず流れ込んでいる。  何故なら彼らと戦っている間も、瞋九龍(チェンジューロン)は火山からの力を己の内に取り込もうと試みているからだ。それに気づいているからこそ、煬鳳(ヤンフォン)は彼の試みを邪魔するしかない。いまはまだ耐えることができているが、長引いてしまったらいずれ限界が来てしまうだろう。 (そうなったら……)  取り込めないほどの力を吸収すれば、黒曜(ヘイヨウ)と繋がっていたときと同じ結末を迎えてしまう。  瞋九龍(チェンジューロン)が咆哮をあげた。  衝撃波が広がって、みな一斉に地面や岩面に打ち付けられる。さしもの凰黎(ホワンリィ)たちも、強烈な衝撃を耐えきることができず、岩にめり込んでしまった。 「凰黎(ホワンリィ)!」  顔をしかめた凰黎(ホワンリィ)の口の端から血が流れ、煬鳳(ヤンフォン)はすぐさま凰黎(ホワンリィ)の元へ駆け寄りたい衝動に駆られる。 「どうしたら、どうしたらいいんだ!」
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