10:無常因果的終結(終末)

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 このままでは状況は変わらない。煬鳳(ヤンフォン)瞋九龍(チェンジューロン)の邪魔をして、戦いを彼らに任せるしか手段はないのか。瞋九龍(チェンジューロン)という化け物と彼らが傷つきながら戦うのを見守るしかないのか。  煬鳳(ヤンフォン)は唇を噛み締めた。 『俺が行く』  黒い人影が煬鳳(ヤンフォン)の傍に立つ。  その後ろ姿には見覚えがある。 「黒明(ヘイミン)!? 原始の谷にいるんじゃなかったのか!?」  目の前に立っているのは紛れもなく翳黒明(イーヘイミン)その人だ。しかし、彼は原始の谷を開くために間違いなく凰神偉(ホワンシェンウェイ)と共に星霓峰(せいげつほう)に残ったはず。  いったいなぜ、彼がここにいるのだろうか?  決まりが悪そうな顔で頬を掻くと、その人物は言った。 『あー、いや。確かに俺は黒明(ヘイミン)でもあるんだけど……黒曜(ヘイヨウ)だ』 「黒曜(ヘイヨウ)!?」 『話はあとでな! あと永覇(ヨンバ)借りるぞ!』 「えっ!?」  黒曜(ヘイヨウ)は疾風のように瞋九龍(チェンジューロン)の元に迫ると、永覇(ヨンバ)瞋九龍(チェンジューロン)を切り上げる。永覇(ヨンバ)の鋭い剣閃は、瞋九龍(チェンジューロン)の脇腹から肩口に掛けて一気に傷跡を生み出した。 「ぐぬっ!? 貴様!」  溢れる鮮血をものともせず、鋭い腕が繰り出される。  瞋九龍(チェンジューロン)黒曜(ヘイヨウ)の腹を抉ろうとしたのだ。  黒曜(ヘイヨウ)は圧縮した翳炎(えいえん)を叩きこみ、二人の間で炎が爆裂した。
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