10:無常因果的終結(終末)

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黒冥翳魔(こくめいえいま)としては正気を失っていたから何一つ覚えてはいないんだが――お前は当時の俺と戦ったんだったよな? あのときの再戦といこうじゃないか。盟主様?』  余裕の微笑みを浮かべ、黒曜(ヘイヨウ)瞋九龍(チェンジューロン)を見る。  普段は鳥の姿をしている黒曜(ヘイヨウ)だったが、どうやら煬鳳(ヤンフォン)が吸収した翳炎(えいえん)の影響を受けて彼も人の姿を一時的に取り戻したらしい。その体からは煬鳳(ヤンフォン)と同様に力が満ち溢れている。 「貴様、あのときは儂が手加減してやったというのに!」 『そうだな。お前は俺の体を滅ぼし、魂だけを残してこの火山に封じた。他でもない――お前自身の体を復活させるためという、野望のためだけに! 今度はお前が滅ぼされる番だ!』  黒曜(ヘイヨウ)は怒りと共に瞋九龍(チェンジューロン)と激しく打ち合う。本来ならば瞋九龍(チェンジューロン)が使うはずだった黒炎山(こくえんざん)の力を、いまは煬鳳(ヤンフォン)黒曜(ヘイヨウ)に流す形になっている。  ゆえに、二人の力はいま互角かそれ以上。  先ほどまでの戦いの傷跡も残っている瞋九龍(チェンジューロン)のほうがやや劣勢に見えるほどだ。 「おのれ! 人間風情が!」 『悪いな。俺も既に人間は止めちまった。いまはお前とそれほど変わらない!』  黒曜(ヘイヨウ)永覇(ヨンバ)による一撃が、瞋九龍(チェンジューロン)の腹を貫いた。  地に落ちた瞋九龍(チェンジューロン)はよろけながら立ち上がる。
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