10:無常因果的終結(終末)

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 それまで頑なに亡き家族に遠慮をしていた凰黎(ホワンリィ)が、瞋九龍(チェンジューロン)と共に尽き果てようとしていた静泰還(ジンタイハイ)を前にして、初めて静泰還(ジンタイハイ)の前で彼を『父親』と呼んだのだ。 『あいつがあんな顔するなんて、意外だな』 「そりゃ、凰黎(ホワンリィ)にとって嶺主(りょうしゅ)さまは本当に大切な人なんだから。当然だろ?」  いつの間にか煬鳳(ヤンフォン)の隣には黒曜(ヘイヨウ)が立っていた。  先ほど静泰還(ジンタイハイ)を風のように連れ去ったのは、何を隠そう黒曜(ヘイヨウ)だ。彼が静泰還(ジンタイハイ)瞋九龍(チェンジューロン)から引き剥がしていなかったら、もう少し瞋九龍(チェンジューロン)を倒すのが遅れたら、火龍は蘇ってしまったかもしれない。 「それより黒曜(ヘイヨウ)、ありがとな。助かった」  煬鳳(ヤンフォン)は隣に立つ黒曜(ヘイヨウ)に礼を言う。 『別に。俺もあいつに恨みがあったんだ。……それに、いまの俺たちに至るまでに、凰黎(ホワンリィ)には随分と世話になっている。これくらい手助けしたってまだ足りないほどだ』  確かに、と煬鳳(ヤンフォン)は笑う。  本当に凰黎(ホワンリィ)には返しても返しきれぬほど世話になっている。ときには迷陣の奥へ、また別のときには高く聳え立つ霊峰に、そして魔界(まかい)にまでも。  ――そんな彼の、心からの笑顔が見られたのだから。  少しは自分たちは彼のために何かをすることができたのだろうか。  そうであって欲しいと煬鳳(ヤンフォン)は願う。
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