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抱き合う二人はゆっくりと体を離し、互いに柔らかく微笑みあった。
「…………阿黎、もう一度父と呼んではくれまいか」
「!?」
少し恥ずかしそうに言った静泰還の言葉を、煬鳳は聞き逃さない。
凰黎は僅かに瞠若し……………………長い沈黙のあと、晴れやかに微笑んだ。
「それは、嶺主様がきちんとお怪我を治されたときまでお預けにしておきます」
「……」
微笑む凰黎に静泰還は絶句していたが、むしろ煬鳳は安堵感に満たされている。
僅かな意地悪を口にする凰黎と、静泰還との距離が縮まったように思えたからだ。
しかし、大切なのはこれからだ。
家族としての彼らの一歩はまだ始まったばかりなのだから。
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