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瞋九龍の身体は首が落ちたあと、みるみるうちに骨と皮になり、まるで何百年も昔からそこにあったかのように石のようになり、そして砂になった。風が吹くたびにさらさらと散ってゆき、既に彼の鎧と僅かな土くれを残すのみ。
「お爺様は……もうとうの昔に亡くなっていたのですね。恐らく、火龍に完全に乗っ取られた頃……」
じっと砂と変わりゆく瞋九龍を見ていた瞋熱燿がぽつりと零した。
「そうだな。それでも、彼が火龍を倒したことに変わりはない。彼が居なければ火龍を封印できなかったろうし、様々なことはあれど今日に至るまでこの地が無事であるはずもない。それだけは変わらない事実」
そんな瞋熱燿を慰めるように、鸞快子が続けた。
火龍の心智は失われ、睡龍の大地に横たわるのは眠れる龍の肉体のみ。
龍の身体は翳炎と共に生き続けてはいるが、龍の心は死んだのだ。二度と目覚めることはないだろう。
結果的に煬鳳は、ようやく目的を果たすことができたのだ。
万感の思いを込め、火口で燃える翳炎を煬鳳は見た。
「煬鳳」
凰黎が煬鳳の肩を抱き、煬鳳は凰黎を仰ぎ見る。
穏やかな表情の凰黎が煬鳳を見つめていた。
(終わったんだ……)
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