11:然后鳳凰抱鳳雛(そして鳳凰は鳳雛を抱く)

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 長い道のりを経て、ようやく煬鳳(ヤンフォン)黒曜(ヘイヨウ)は己の運命から解放されたのだ。  成り行きとはいえ、それでも頸根(くびね)の痣一つからここまで大事になってしまうとは、当時の煬鳳(ヤンフォン)は思いもしなかった。  五行盟(ごぎょうめい)がこれからどうなっていくのか、煬鳳(ヤンフォン)には分からない。けれど煬鳳(ヤンフォン)凰黎(ホワンリィ)の目的はようやく終わりを迎えたことになる。 「帰ろう、俺たちの小屋に」  煬鳳(ヤンフォン)はもう一度凰黎(ホワンリィ)を見て、抱き着いた。 「大変だ!」  返答を待つことはなく、煬鳳(ヤンフォン)たちは山下より駆け上がってきた男に目を移す。男は蓬静嶺(ほうせいりょう)の門弟だと分かる服装をしており、恐らくは蓬静嶺(ほうせいりょう)を含む煬鳳(ヤンフォン)たち一行を追いかけてきたのだと思われる。  よほど慌ててやってきたのか嶺主(りょうしゅ)の元に辿り着く前に地面に倒れ込んでしまった。 「大丈夫ですか!?」  清粛(チンスウ)鼓牛(グーニゥ)が男に駆け寄って容態を確認する。清粛(チンスウ)が男に霊気を送り込み、男はようやく落ち着きを取り戻した。  よほどの難道を通ってきたのか、袖や裾はあちこち引っ掛けて破れている。煬鳳(ヤンフォン)たちは、黒炎山(こくえんざん)の頂上までの道筋をある程度把握していたため険しい場所を通ることはなかったが、あとからきた彼は知らなかったのだろう。
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