11:然后鳳凰抱鳳雛(そして鳳凰は鳳雛を抱く)

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「……かなきゃ……」  はやる気持ちを抑えながら、煬鳳(ヤンフォン)は呟く。 「行かなきゃ……原始の谷に! みんなを助けないと、止めないと!」  煬鳳(ヤンフォン)は立ち上がって凰黎(ホワンリィ)を、そして鸞快子(らんかいし)に訴える。 「小黄(シャオホワン)も、凰神偉(ホワンシェンウェイ)も……それに黒明(ヘイミン)も心配だ。みんな無事なのか、確かめないと! それに、倒れた人たちも……! 今すぐ!」 「煬鳳(ヤンフォン)、落ち着いて。状況を整理しましょう」  いつになく冷静な声で凰黎(ホワンリィ)が言う。  なぜ? 「落ち着いてなんていられないよ! だって。お前の兄貴だってどうなってるか分からないんだぞ!? それに、小黄(シャオホワン)だって……」 「この状況はどこか奇妙です。恐らく兄上や翳黒明(イーヘイミン)たちすらも手玉に取るような力が――」  煬鳳(ヤンフォン)は急速に己の視界が暗くなっていくことに気づいた。目の前にいるはずの凰黎(ホワンリィ)の顔が歪んで見えないし、だんだんぼやけて暗闇に溶けてゆく。 (なんだ、いったいどうしたんだ!?)  焦って何かを言おうとすると、今度は固い地面に放り出されてしまった。 「いてっ!」  再び視界が明るくなったとき、煬鳳(ヤンフォン)は見たこともない場所にいることに気づく。  洞窟の中にもかかわらず、周囲は異常なほどに明るい。不思議に思ったが、その理由はすぐに判明した。
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