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「ええと、先ほど少しお話しましたが、金おじさんの家は村で一番裕福な夫妻です。でも偉ぶってるわけでも無くて、誰にでも優しい。村に小さな廟を立てて毎日お祈りを欠かさないような、そんな信心深い方なんです。会えばいつも笑顔で挨拶をしてくれる、時々お菓子を分けて下さることもあるし、僕も皆も、おじさんとおばさんを慕っていました」
「なら、殺された奴らはどうだった?」
「そりゃ皆あの人たちにお世話になってますよ。小さい村で、しかも優しい金持ち夫妻。僕たちだけでなく、村の皆が同じです。本当に良い人なんですよ」
先ほどあれだけ『殺せ』だの言われて探し回られていたというのに、その夫妻のことを『本当に良い人』などと言うものだから、呆れ半分で煬鳳は苦笑いする。
(本当に良い人はそんなこと言わないんだけどな……)
そうは思ったが煬鳳は黙っておくことにした。
「そういやあの夫婦。『あの子』って言ってたけどさ。お前心当たりあるか?」
「あの子、ですか? ……あるといえばありますが、でも……」
何故か仲眠は言い淀む。どうやら何かしら事情があるようだ。
「話してくれ。多分さっきのことに関係あると思うから」
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