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真っ青な顔で翳黒明が叫ぶ。もうその表情を見たら、なにが起こったか分からぬ煬鳳たちではない。
(翳冥宮で死んだ人たち……)
人形はやがて白い紙ではなく、人の姿を取り始めたのだ。
先ほど煬鳳たちの前に現れた魔界の人々の残影ともまた違う。閑白はここで死んだ者たちの眠りを再び覚まそうとしているのだ。
「あれは……!」
真っ先に反応したのは凰神偉がだ。
「兄上、知っているのですか?」
凰黎の問いに凰神偉は頷く。
「いまは使う者もいない、既にこの世に存在しないはずの太古の術法だ。……この仙人は恐らく、その頃から生きていたということになるだろう」
「待ってくれ、ってことは、やっぱりこいつが鬼燎帝を裏で操っていたってことか!?」
思わず煬鳳は叫ぶ。
失われたはずの邪教の術法――魔界で鬼燎帝を唆していた何者かが逃げるときに残した呪符がそれだ。
「まあ、魔界の人間が絡んでるはずなのに、ここに現れたのが魔界の人間ではなくコイツだって時点で、そうだと決まったようなものか」
驚き半分、残りは予想の範疇。
鬼燎帝を唆した閑白は魔界の人間たちを翳冥宮に送り込ませたが、その前の下地を準備したのは結局のところ閑白だったということだ。
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