115人が本棚に入れています
本棚に追加
不意に煬鳳は、辺りに陰気が濃くなってきたのを感じ取る。
閑白の力に押されているのか、それとも凰神偉が鎮めていた封印が解けつつあるのか。煬鳳は咄嗟に振り返って叫ぶ。
「鸞快子、小黄を守ってくれ!」
素早く煬鳳の意図を察して鸞快子は小黄を守るように移動する。
小黄の隣には彩藍方もいるはずだが、相手が閑白となると彩藍方だけでは心もとない。彼の鉄鉱力士は非常に強力で頼もしい存在ではあるが、それとて仙人が作り出した『本物』の、模造品に過ぎないのだ。
「黒曜、いけるか?」
『クエェ……』
煬鳳は小黄の元から飛んできた黒曜に向かって問いかける。黒曜は怒りでぶるぶると震えてはいたが、戦う気はあるらしい。
(あいつが暴走しなきゃいいけど……)
そんな黒曜の様子を見ながら翳黒明のことを煬鳳は思う。黒曜と翳黒明の感情の揺れはほぼ近い。黒曜がここまで怒りで動揺しているということは、翳黒明は更に怒りに震えているはずなのだ。
そんな煬鳳の思いを察してか、凰黎は立ち尽くす翳黒明の傍に近寄った。
最初のコメントを投稿しよう!