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「翳黒明。私に貴方を止めることはできません。……ですが、怒りで我を忘れてはまた繰り返すことになってしまいます。どうか……」
「分かっている!」
翳黒明の瞳は赤く輝いている。これはかなり危険な兆候だ。
目の前に恨むべき相手がいる。そして過去だけではなくいまもこうして、翳冥宮の人々を苦しめている。
翳黒明が怒るのは無理がないことなのだ。
「凰黎……」
煬鳳は心配そうに凰黎を見た。
「……いまは彼を信じるしかないでしょう。どちらにしても、これは彼が決着を付けなければいけないことですから……」
悲痛な表情で凰黎は首を振る。
「翳黒明。お前ってやつは本当に私の予想と違うことばかりしてくれる!」
こみ上げるような血の臭いが充満しているその中で、閑白は翳黒明と向き合い怒鳴った。
「あのときあの場所で全員の息の根を止めるはずが、お前だけ恒凰宮に行っていて難を逃れてしまった。しかもあろうことかせっかく祭り上げるはずだった翳白暗を殺してしまったんだ」
「……お前が白暗を唆したのか?」
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