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閑白が凰神偉を蹴り飛ばす。あっと凰黎が叫んだ瞬間に、馬乗りになった閑白の持つ刃が凰神偉の頭上に振り下ろされた。
「兄上ーーーーっ!」
叫ぶ凰黎の声とほぼ同時のことだ。
凰神偉の上にいたはずの閑白が、広間の壁に飛んで行った。壁が脆かったのか、力が強かったのか、どちらかは分からない。しかし、閑白がぶつかった壁は音を立てて崩れ落ち、閑白の眼前にはゆっくりと立ち上がる翳黒明の姿があった。
「小癪な……魂魄だけの存在の癖に!」
閑白が翳黒明を睨みつけ、翳黒明は手に持った剣を静かに構える。
翳冥宮の復興を夢見たはずの彼ではあったが、間違いなくいまは――刺し違えてでも閑白を葬る気でいるようだ。先程まで震えていた剣先も、覚悟を決めたいまとなっては、水が打ったように静けさを取り戻している。
凰黎と煬鳳はすぐさま凰神偉を助け起こしに走ったが、助け起こされるなり凰神偉は「私は平気だから、翳黒明の力になってやれ」と言ってくる。
「そう言わないでくださいよ、兄上のことを心配しているんですよ、凰黎は」
兄上、と呼ばれた凰神偉の眉がぴくりと動いたが、
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