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「せめて貴殿だけでも彼の力になってやりなさい。彼はいま、一人なのだから」
と、やはり煬鳳は背中を押し返されてしまった。
「ああもう、師兄の身体なんだから、絶対無茶するなよ……!」
小さい声で彩藍方がそう言ったのが聞こえたが、流石に空気を読んで大声では叫ばなかったようだ。無慈悲にも聞こえるが『命を懸けてもあいつを倒せ』というよりはまだ『無茶するな』のほうが翳黒明にも優しいかもしれない。
翳黒明と閑白とは互いに構え、睨みあっている。
閑白は強い。煬鳳も首の痣のことがあったとはいえ閑白に一矢報いるのが精一杯で凰神偉でさえも本気の閑白に押され気味だった。
対して翳黒明は借りている体の制限を受けており、本来の自分の力の全てを使うことはできない。
それでも翳黒明は閑白を睨みつけ、はっきりした声で言い放った。
「お前は百年にわたって俺たちを、翳冥宮の人たちを傷つけてきた。その責めは負って貰おう」
「はっ、よくもまあ被害者ぶるものだな?」
閑白はそんな翳黒明の言葉を笑い飛ばす。
「元はといえば自分で蒔いた種だろう。お前が一度でも問題に真摯に向き合っていたのなら結果は違ったのではないか? 結局、お前は自分がやってきたことのツケを、私に転嫁しようとしているだけだ!」
「それでも……っ」
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