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「……わかってないのはノア様の方じゃないですか?」
「は?」
俺が何をわかってないって言うんだ?
レティシアは俺の大切な人で。ずっと守りたくて。それだけなのに。
「ちょっとベラっ……」
「モニカは黙ってて!」
モニカが何か言いかけたが、ベラの声にかき消される。
「ノア様はレティシアのことがずいぶん気に入ってるようですね」
「……ああ」
「ノア様がレティシアに向ける愛情が本物だと思いたくないですが、百歩譲ってノア様が心からレティシアを愛していたとします」
何が言いたいんだ。
俺は心からレティシアを愛しているし、これから幸せにしたい。この想いに嘘はない。
ベラは光のない目を俺とレティシアに向けた。
「ノア様がレティシアから愛されているという証拠はどこにあるんですか?」
「…………」
俺はレティシアからは愛されていない。そう言いたいのか?
俺の気持ちの押し付けで、レティシアからの愛情はない。そういう意味なのか?
そっと視線を下に向ける。
穏やかな寝息を立てて、眠り続けるレティシアが腕の中にいる。
なんだか急に怖くなった。
――ノアといても楽しくない。
「……っ!」
頭に強い痛みが走り、身体の力が一瞬抜けた。
慌てて力を込め直し、レティシアを抱きしめる。
「……ねえ、アルフィー。わかる?」
「……ああ。彼まで過去に囚われている」
「それっ、どういう意味?」
モニカが泣きそうな声で尋ねる。
そんなモニカを、シャノンはじっと見つめた。
「あなたなら知ってるんじゃない?」
「え……」
「彼の幼馴染なんでしょ?過去に苦しい思いをしたこと、知ってるんじゃない?」
「……まさか」
モニカはその場で固まってしまった。
「あの時の……あの子達のせいで?」
「何か知ってるの?」
フレディの問いに、モニカは苦しそうに頷いた。
「……ノアには、私以外にも幼馴染がいるの。でも、その子達はノアに愛想を尽かして離れていっちゃって。ノアのトラウマになってるんだ」
もう顔も名前も覚えていない。
それでも、あの時浴びせられた言葉は覚えている。
――ノアといても楽しくない。
――もう一緒に遊ばないから。
――そんなに『お仕事』が好きなら、それだけやってれば。
レティシアは、あんなこと言わないよな?
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